333DISCS PRESS

●乙女歌謡

こんにちは。甲斐みのりです。

333pressのこのコーナーでは、日本語の歌に限らず、自分の好きないろいろな音楽をご紹介させていただきます。

 

8月となり、子どもたちや学生さんは夏休み本番。平日の昼間、街や電車の中でこれからどこかにでかけようとしている小学生のグループに出会うと、私まであの頃の気持ちを思い出し、どきどきと胸が高鳴ります。

 

6月の終わりから7月の半ばまで、東京・手紙舎さんと、京都・恵文社一乗寺店さんで「甘いノスタルジア~おやつの記憶~」というイベントをさせていただきました。泣きながら、怒りながら、お酒を飲む人はいても、泣きながら、怒りながら、おやつを食べる人はそうはいません。ドーナツ、ホットケーキ、ゼリー、チョコレート、アイスクリーム。お母さんがつくってくれた、おじいちゃんが食べさせてくれた、そんな風に、懐かしもどこか切ない思い出を含んでいるおやつ。実際におやつを食べたり、作家たちのおやつの描写を読むことでいつかの記憶がよみがえるように、そんなイベントにできればと。

 

そしてそのイベントで流れるサウンドトラックとして三品輝起さんに作っていただいたのが『Long Day』というCDアルバム。少年の、ある夏休みの長い一日が、音楽に。収録の20曲には、「時間」と「番号」が記されています。最初の曲、「目覚め」は朝の5時。最後の曲、「もうお別れの時間」は真夜中。曲についた番号とリーフレットに描かれた地図の中の番号を照らし合わせてみると、少年がそのときその時間、町のどこにいたのかが分かります。

 

「本当は何もなかった」、三品さんのここしばらくのテーマとのこと。みんな、何にもないところから、何かを見つけ、記憶を重ねたり、忘れたりの繰り返し。「甘いノスタルジア」というイベントの裏テーマ、「思い出すこと、忘れること」を、三品さんの音楽にすくいとっていただくことができた気がします。ジャケットやCDのデザインは、葉田いづみさん。ジャケットの地図は三品さん本人が描いたもの。三品輝起「Long Day」は、三品さんのお店「fall」で販売中です。

http://fall-gallery.com/


すてきな夏、すてきな夏休みを!

 

甲斐みのり

文筆家。1976年静岡生まれ。旅・お菓子・各地の食材・クラシックホテルや文化財の温泉宿などを主な題材に、女性が憧れ好むものについて書き綴る。http://www.loule.net/