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●チナボンボンブック

■「人生は廻る輪のように」エリザベス・キューブラー・ロス

ほんとうにほんとうにすばらしい本!エリザベス・キューブラー・ロスは、1926年スイスに生まれ、その後結婚して渡米。全世界ですばらしい愛と奉仕の活動をした精神科医です。これは彼女が晩年にしたためた自伝なのですが、彼女の信念が随所にちりばめられており、読むと生きる勇気がもりもりわいてきます!

エリザベス・キューブラー・ロスは、ターミナルケア(終末医療)を確立した人と言われ、「死ぬ瞬間」という本の著者としても有名です。

彼女の人生は、多くの偉人の人生がそうであるように波乱に満ちています。国際平和義勇軍での難民救済活動、カントリードクターとしての活動、そして、「死」は医者の失敗・敗北として、それまで片隅に追いやられていた末期ガンや不治の病の患者たちの救済。彼女はその活動のなかで自然と「死」とはなんなのか?という科学や宗教を超えた研究に取り組んでいくことになります。が、医者である彼女がそういう”越境”をすることは、保守的な多くの医者からはなかなか理解されずに苦しみます。また、晩年には、エイズの子供たちのためのヒーリングセンター設立をめぐり、無知であるがゆえに理解のない地元の人々から、放火などさまざまな嫌がらせをされたり命をねらわれたり…。

それでも彼女は屈することなく彼女の「無条件の愛」を貫き通すのでした。とにかくすべての人に読んでもらいたい名著です。

 

■「パピヨン」田口ランディ

エリザベス・キューブラー・ロスを知るきっかけとなった本をご紹介します。

ナチス強制収容所をたずねたロス女史は、壁に描かれた無数の蝶の落書きを見つけました。はじめはそれがなにを意味するのかまったくわからなかったのですが、彼女の活動のなかで、それがありのままのたましいの象徴なのだと確信します。「死」とは肉体というさなぎから蝶になって飛び立つことなのだと。

この蝶=パピヨンと題された本書は、終末医療の先駆者エリザベス・キューブラー・ロスの取材をしているうちに、偶然にも(必然?)父の死に直面することとなったランディさんの記録です。彼女のエッセイや小説にはよく頑固な父親が登場し、彼との確執を隠さないできたランディさん。むずかしい父子関係になかなか素直になれず、さまざまな葛藤をありのままに描いています。が、ロス女史の取材を通じて、ありのままでいること、自分らしくあることに気付き、彼女なりの受容の段階を経てお父さんを看取ります。

なんだか身につまされるところもあり、こころがじんわりとあたたかくなる本でした。

 

チナボン
バンドsugar plantのヴォーカル&ベース、正山千夏のソロユニット。2005年伊藤ゴロー氏のプロデュースで「in the garden」(333DISCS)をリリース。1994年詩集「忘却セッケン」で第10回早稲田文学新人賞受賞。http://blog.livedoor.jp/cinnabom/