333DISCS PRESS

●西荻の街角から〜トウキョウエコノミー

「ケインズの末裔たちのパーリィ」

文責:三品輝起

公園のベンチなんかでムリして読書をしてると、文字にちらちら若葉やカップルたちの影が映って、どこを読んでたのか、なにが書かれていたのか忘れてしまうのも、いとをかし。というわけで、新緑の季節がきましたねー。このコーナーってエコノミーとなんも関係ないじゃん、と指摘されつづけているので、今日は最近読んでおもしろかった新刊の経済本をいくつか。

・1月にでた、小野善康『成熟社会の経済学(長期不況をどう克服するか)』(岩波新書)

・2月にでた、ジョセフ・ヒース『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版)

・3月にでた、J・M・ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』(講談社学術文庫)

まず『雇用、利子、お金の一般理論』。高校のときに「政経」を専攻してた人なら苦労して暗記させられたであろう「こよう・りし・かへいのいっぱんりろん」の新訳である(やっとちゃんと読みました)。ここで要約版が読める。

それまでの古典派経済学を誰よりも深く学び、理解し、70年前のある日「レッセフェール」という神聖なる公理にたいして、たった一人で全面戦争をしかけた男がケインズだ。いまでこそボロクソいわれて悪名高い『一般理論』だが、「社会には構造的に需要不足が存在し、それが失業を生む、よって公共事業と金融緩和で通貨の供給を行うべきだ」という(革命的な、でも現代人からするとなんてことない)訴えを、世界ではじめて理論として打ちたてた一冊。学説的には多くが止揚されているけど、当時の経済学界の権威たちを敵にまわし、己だけを信じて戦う姿には感動しますよ。結果、世界を変えたわけだから。

『成熟社会の経済学(長期不況をどう克服するか)』の著者は、社会の総需要不足に焦点を当てているという意味では、現代のケインジアンといってもいいだろう(菅元首相のブレーンだったことでも有名だけど)。もちろん、オールド・ケインジアンが唱えるいわゆる「バラマキ」とは異なる公共事業を提案をしている。観光、少子高齢化、災害、環境などなど。金融政策には懐疑的みたい。

ご存知ない方にいっておくと、経済学にはあらゆる学派があって、毎日ケンケンゴウゴウやってる。本書の有効需要政策というのはどちらかというと肩身のせまい派閥に入る。なんせ税金をしっかり使うから。よって賛否はいろいろあるんだけど、<供給不足(ほしいものだらけで貯蓄=投資が不足)の「発展途上社会」>から<需要不足(あまりほしいものがなく蓄財に走り、消費が不足)の「成熟社会」>へ、という状況認識はユニークだし一回くらい読んでみても損はないと思う。

最後は『資本主義が嫌いな人のための経済学』。資本主義の恩恵に浴してない人(例えばお金の神様に見放されているワタクシのような人)は、まあ、多かれ少なかれ資本主義に不満がある。

友人知人にいろいろ聞いてみると、「なんだかわからんが、このシステム大丈夫なんやろかー」という模糊たる不安に包まれてる人、「給料もっとくれー、職をくれー」みたいな切実な要望をもつ人、所得の分配や資産の分布が偏ってることに疑問をもつ人、ワタミ会長やジャパネットたかた社長がなーんかイヤって人(おれ好きです、顔が)、なかにはお金(の増殖=利子)を諸悪の根源だと断罪する人、もっと過激な人だっている。

 

みなさまの愚痴はさておき……このカナダ人哲学者は、歴史的にでそろった感のある保守から革新、リバタリアンからリベラルまでの、あらゆる主義主張を検討し、経済学の最新の成果をまじえつつバランスをとっていく(ちなみにケインズには一定の評価をあたえてる)。前半では右派の「いい過ぎ」を、後半では左派の「いい過ぎ」を正すような構成になっている。よって結論はスッキリしないんだけど、現実ってのはそういうもんですよね(ねっ? みつを先生)。大人の議論、オススメです。

ではでは新緑の公園で(もしくはワタクシのお店で)お会いしましょう、アジュー!

三品輝起(みしなてるおき)

79年生まれ、愛媛県出身。05年より西荻窪にて器と雑貨の店FALL (フォール)を経営。また経済誌、その他でライター業もしている。音楽活動では『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -tribute-』(commmons × 333DISCS) などに参加。2011年7月、アルバム『LONG DAY』(Loule)を発表。

 

●乙女歌謡

こんにちは。甲斐みのりです。333pressの乙女歌謡コーナーでは、日本語の歌に限らず、私が10代の頃に夢中になっていた、愛らしい歌をご紹介していこうと思います。

これまでは、LIO、ANTENA、marie laforet、virginia astley、Margo Guryanと愛らしくも芯の通った女性ボーカルの歌をご紹介してきました。学生時代は大阪のレコードショップが主宰する「女性ボーカル友の会」というサークルに入っていたり時間さえあれば、女性ボーカルばかりのミックステープをつくっていたことを思い出します。

 

そんな中、手にとったのが、クレプスキュールレーベルのコンピレーションアルバムに参加したのち、細野晴臣さんが創設したノンスタンダード・レーベルよりリリースされたグレゴリ・チェルキンスキー、パスカル・ボレルというフランス人の男女ふたり組ユニット、MIKADOのレコード。アルバム『MIKADO』が発売されたのが1985年で、私が最初にであったのは大学1年生だった1995年のことなので10年も後追い。けれども、ささやくようなパスカルの歌声と、機械的だけれどきらきら輝く音はそれまで聴いたことのない、新しくておしゃれでときめきを覚える音楽でした。さらにあの日から15年。リリースから25年を経ていたとしてもやっぱり私には、レコードのジャケット写真のように淡いピンクと水色の色褪せることのない色彩を耳元に届けてくれるのです。

そんなMIKADOの代表曲「冬のノフラージュ」を日本語でカバーしたのが森尾由美さん。「イマージュ」というタイトルで、作詞家・詩人・エッセイストとして活躍した安井かずみさんが日本語の歌詞をつけています。安井さんは「ズズ」という彼女の愛称と同じタイトルのアルバムも出している方。加賀まりこさんや、かまやつひろしさん、吉田拓郎さんなど、当時最先端を歩いていた著名な方々と交流を持ち、フォーク・クルセダーズやサディスティック・ミカ・バンドで知られる、ミュージシャンの加藤和彦さんと結婚しました。沢田研二さんや西城秀樹さんをはじめ、誰もが知っている数々の日本の名歌謡曲を書いています。

「乙女歌謡」という視点で代表をあげると、竹内まりやさんの「不思議なピーチパイ」や、ナンシー・シナトラの「Like I DO」の訳詞で、ザ・ピーナッツが歌った「レモンのキッス」なども手がけています。レモンティー、ミルフィーユ、ひとりごと、子猫、読みかけの本、そして「お嫁にゆくイメージ」という言葉の数々。

CDやレコードでなかなか探しにくい曲なので、5月27日(日)「東京蚤の市」での乙女歌謡イベントにて、聴いていただくことができればと思っています。ご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひお待ちしております。

甲斐みのり

文筆家。1976年静岡生まれ。旅・お菓子・各地の食材・クラシックホテルや文化財の温泉宿などを主な題材に、女性が憧れ好むものについて書き綴る。http://www.loule.net/

 

●おやこでおでかけ

子どもが成長するにつれて、どんどん増えるおもちゃの山。まだ古くないし思い出もあって捨てるには忍びない、でも収納スペースは限られている…悩みの種ですよね。親が望む理想のおもちゃとはどんな物でしょう?欲張りな私の理想は、「色々な遊び方ができ、飽きずに長く遊べて、かさばらない。あわよくば知育にもよさそうなおもちゃ」!

そんな要望に今現在応えてくれているおもちゃ、それはコクヨの「ワミー」という名の不思議な形の柔らかいブロック(なんと、おせちの「ねじりこんにゃく」から発想を得たとか)。基本色の他に女子が好きそうなパステルカラーやラメカラー、蓄光カラーもあって選び放題。長ーい線路を作ったり、帽子やバッグにしたり。水遊びやしゃぼん玉にも活用できます。旅行時にジップロック袋に入れて持っていくと、移動中にもしばらく集中して遊んでくれるので助かっています。ボールにすれば赤ちゃんでも遊べますし、我が家の娘の場合、2歳後半から自分で組み立てられるようになりました。

書店の絵本売り場に置いてあったりするので、見かけたら是非試してみて下さい。大人もはまりますよ!

岩崎一絵
当ウェブマガジン編集担当。北海道出身。3歳児の育児奮闘中。

●tico moon

4月7日、東京ではちょうど桜が満開になった気持ちの良い土曜日の午後、
中目黒のトラベラーズ・ファクトリーさんで『旅人たちのお花見音楽会』が開催されました。
アアルトコーヒーさんの珈琲と、ダン・ラ・ナチュールさんのお菓子、
そしてtico moonの音楽で、お花見の合間のひとときを過ごしていただきました。
(影山敏彦/tico moon)

●2012年の抱負とみなさまへのご挨拶

【伊藤葉子】2012年、新しい年になりました。2011年は、良い事も悪い事も、過去に経験した事のない自分のキャパを超えた出来事が沢山ありました。新しい方との出会いも沢山あり、考え方を変えざるを得ない事も多々あり、本当に勉強になった一年でした。今年はどんな事が起こるのかわかりませんが、いつも通りに地道に、コンスタントにやって行けたら、、、と思っています。本年も333メンバー一同がんばります!どうぞよろしくお願いいたします。

【goro】真夏のブラジルから帰ってきました。東京は寒い!みなさまいかがお過ごしでしょうか?今年はアルバムを何枚か出す予定があります。去年は一枚しか作れなかったので、がんばります。

【naomi】本年もよろしくお願いいたします。新年はこのpressでも登場していらっしゃるフルールドクールの阿部さんの御宅でかるた取りをしてきました。皆様にとって素晴らしい一年でありますように。

【tico moon影山敏彦】昨年はtico moon結成10周年、そして来年は初めてのアルバム『lento』をリリースしてからちょうど10年。長かった様であっという間だったこの10年という時間を大切に噛みしめながら、今年も音楽を奏でていきたいと思います。

【tico moon吉野友加】今年は tico moon 11年目になりました。新しい10年の始まりとして、新鮮な気持ちで活動したいと思います。今年もどうぞよろしくお願いいたします!

【甲斐みのり】2012年がはじまり、ひと月がたってしまいましたが、どうぞ今年もよろしくお願いいたします。一昨年は「寡黙」、昨年は「人見知り克服」を新年の抱負として日々を過ごしましたが、今年はもっとたくさん旅をしたいなあと思っています。昨年、tico moonさんから、ツアーで全国をまわられた話しを伺って、旅っていいなとあらためて思って。春に、出身地である静岡案内の本を出すのですが、東京から静岡の距離でもじゅうぶんな旅。近くでも遠くても、時間をみつけてあちらこちら巡れたらと思います。

【葉田いづみ】昨年は大変な災害があり、原発事故の被害はまだ続いています。今年はみんなが少しでも穏やかな日々が過ごせますように、願っています。

【阿部桂太郎】穏やかに、そして家族が幸せに暮らすことができれば良いと思っています。また皆さまにとっても、2012年が本当に幸せな一年になりますように。

【三品輝起】本年もよろしくお願いします。大人になります。

【青芝和行】去年は暗いニュースが多かったので、明るい一年になればと思います。個人的には、趣味のランニングで今年は1,300kmを目標距離にしたいと思います。

【岩崎一絵】333DISCS PRESSも気づけば5年目。いつもご愛読ありがとうございます。季刊なので細々とではありますが、皆様それぞれにお気に入りのコーナーを見つけて頂けるようなウェブマガジンを続けていきたいです。